アディクション関係のニュースです。
by tamachanspaws
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私の児童虐待 最終報告 高校中退以来、26年ぶりの父との対話2 柳美里
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私の児童虐待 最終報告
高校中退以来、26年ぶりの父との対話 柳美里
5、 http://megalodon.jp/2010-0324-2242-33/g2.kodansha.co.jp/?p=3922&page=5
6、 http://megalodon.jp/2010-0324-2244-02/g2.kodansha.co.jp/?p=3922&page=6
7、 http://megalodon.jp/2010-0324-2246-00/g2.kodansha.co.jp/?p=3922&page=7
私の児童虐待 最終報告
高校中退以来、26年ぶりの父との対話 柳美里
5、 http://megalodon.jp/2010-0324-2242-33/g2.kodansha.co.jp/?p=3922&page=5長谷川 もう、楽しさは飛んで行っちゃった。
柳 はい。
長谷川 もちろん左手で握ってたわけですね。
柳 あぁ……今、左手でぎゅっとやってましたね……。
長谷川 お父さんとの楽しかった思い出、ほかにありますか?
柳 旅行とかではいくつか思い出せるんですが、家の中では、思い出せませんね。でも、父が私にくりかえし語った思い出話なんですけど、よく父のお腹の上に、赤ん坊だった私を仰向けに寝かせて、昼寝したそうなんです。親ガメ・子ガメをやると、スースーすぐに寝息を立てた、と……。
長谷川 寝ちゃうのは、子ガメ?
柳 子ガメが先に寝て、親ガメも寝る。親ガメ・子ガメで昼寝する。
長谷川 そうすると、親ガメは子ガメが寝るまで起きてるんだね。
柳 なんかこう、父にとっては幸せな時間だったみたいですね。
長谷川 お父さんに聞いた話?
柳 ですね。
長谷川 その話を聞いて、どう思った?
柳 あぁ、そういうこともあったのかな、と……。
長谷川 そのとき、お父さんは笑っていたかもしれないね。
柳 そうですね。
長谷川 けれど、それはお父さんの記憶の中の父子関係であって、柳さんの記憶の中の父子関係は、些細なことで激昂して殴られるという。殴られているときの気持ちは?
柳 殴られているときに思ったのは、「死んでやる」ですかね。
長谷川 それは、父親に対する当てつけで?
柳 そうですね。
長谷川 もし、自分が死んだり、大怪我をしたら、父親は自分を怒鳴ったり殴ったりしたことを後悔するんじゃないか? そこまで考えた?
父は、私が自殺したと思った
柳 いつも、私の死を知らされたときの父や母の顔や、学校の教師やクラスメイトの顔を想像していました。顔に泥を塗るようなイメージですね、ザマアミロ!と。当てつけというか、もっと強い復讐としての自殺を、小学五、六年のときはいつも考えていましたね。でも、いざ橋の上やマンションの屋上に立つと、怖くて飛び降りることができない。あとになって弟から聞いた話なんですけど、父に殴られて鼻の骨をへし折られたときも、「死んでやる!」と家を飛び出たんですよ。でも、やっぱり死に切れなくて、でも家には帰りたくなくて、暗くなるまで公園に隠れてたんですよ。そのあいだ、父が家の中で、なにをしていたか。うちには、父が撮った家族の写真が大きく引き伸ばして額に入れて飾ってあるんです。家族全員が写ったものもあれば、一人ひとりの写真もある。父は、私の写真の額を壁からおろしたそうです。もうどこかで自殺したかもしれないからって。
長谷川 ふう〜ん。
柳 私は、母がキャバレーに、父がパチンコ屋に出勤する時間まで隠れていて、車庫から父の車が出た直後に家に帰ったわけですが、自分の写真がなくなっていて、びっくりしました。そしたら、弟が「パパがおろしたんだよ」って教えてくれて……。
長谷川 それは、お父さんの当てつけ行為かな?
柳 解りませんね。
長谷川 普通、逆じゃないのかな? 娘がいなくなったら、娘の写真を大事に取っておくとか。
柳 末の弟が事故に遭って、生死の境をさまよったことがあるんですが、一時期、危篤になって、そのときも、弟の写真を壁からおろしました。で、私たちを集めて、「死ぬものは仕方ない。残った家族で仲良くやっていくしかない」と話したんです。
6、 http://megalodon.jp/2010-0324-2244-02/g2.kodansha.co.jp/?p=3922&page=6長谷川 それは父親の、どういう気持ちなんだろう? 諦めですかね?
柳 親だったら、どうしたら息子が助かるのか、助かるならなんでもしよう、と奔走するものじゃありませんか。でも、父はそうじゃないんです。生きるの死ぬのでは藤しない。子どもが大きな事故に遭ったり、大病を患ったりすると、すぐに死ぬものと決め付けて、「仕方ない」と諦めてしまうんです。写真は、死んだあとに見るのは辛いから、死ぬ前にはずしておこう、という奇妙な合理性が働いているからだと思うんですけど、どうして、そんな風に考えるのか、ほんとうのところは解りません。理解に苦しみますね。
長谷川 お話を伺っていると、子どもたちに向けての一つの感情が垣間見えますね。
柳 写真をおろすという行為に?
長谷川 ええ。あと、「パパ、死ね」と書いた娘の日記に赤線を引いて画鋲でとめるとかね。親であれ、子であれ、死んでしまうこと、いなくなってしまうことへの深い悲しみ。それをストレートに出せず、むしろ正反対でしか表現できない不器用さ。絆への渇望、ですね。私にはお父さんの、そういった隠された感情が読み取れてしまうんです。
でも、娘である柳さんの中に、お父さんへの気持ちが見えないんですよ。こうなったら二者択一で確認するしかないかな? お父さんを好きですか? 嫌いですか?
柳 好き、嫌いですか(笑)。
長谷川 ちっちゃな子にね、幼稚園ぐらいの子に「お父さんのこと好き? 嫌い?」って訊くと、「好き」とか「嫌い」とか割と正直に答えてくれますよね。そんな感覚でいいです、深く考えないで。
柳 幼稚園ぐらいのときだったら迷わずに、「パパが好き」って答えてましたよ。親戚がよく訊くんですよ。「美里は、パパとママ、どっちが好きなの?」って。「パパのほうが好き」って答えてましたよ、私は。
長谷川 「パパのほうが好き」と答えておかないと、お父さんの耳にはいったときに怖いことになる、と思ったからじゃないですか?
柳 う〜ん……。
長谷川 お父さんのこと好きなの?
柳 好きか、嫌いか……。
長谷川 頭はね、今は、使わないで。こう、フッと沸きあがってくる感情。お父さん、好きなの?
柳 嫌いでは、ない。
長谷川 好きなの?
柳 好き……好きでもないですね。
長谷川 好きではない?
柳 好きではない、と言うと、好きでもない、より少し強い感じですね。
長谷川 好きでもない、嫌いでもない、と言うと、結局なにも言ってないことになっちゃうから(笑)。
柳 でもですね、息子を産む前だから、もう十年以上前になりますが、妹とたまに大喧嘩になったんですけども、喧嘩のきっかけはだいたいいつも、どっちがママに似ているか、ということだったんですよ。
長谷川 妹さんに、柳さんとお母さんが似ている、と指摘されて?
柳 いえ、お互い、こうこうこういうところがママに似てるよ、と指摘し合うんですが、妹と母親はB型で、私がA型だったり、妹と母親は家事が苦手で、私が得意だったり、妹と母親のほうが共通点が多いんですよ。で、最終的には「あんたこそ、なにからなにまでママそっくりじゃん」と言ったら、不二家のテーブルで向かい合ってたんですが、妹は食べかけのチョコレートパフェを私の顔めがけて投げつけて、席を立って出て行ってしまいました(笑)。
でも、父親と似ている、ということで喧嘩になったことは一度もないですね。顔やからだのどこかや、性格のどこかが父に似ていると指摘されたところで、別にどうってことないというか、感情がまったく動かないですね。でも、母に似ている、と言われると、眉毛の形や笑い方などの小さなところでも、もうイヤでイヤで、即座に否定したくなります。そう考えると、私は父よりも母のほうが嫌いなのかもしれない。
7、 http://megalodon.jp/2010-0324-2246-00/g2.kodansha.co.jp/?p=3922&page=7長谷川 お母さんとは感情の交流をしているということですよね。お母さんがかわいそうだという気持ちも持っていたし。でも、今お話を伺うと、やはり事情があって、お父さんに対する気持ちはシャットアウトされている。
柳 それは、何故なんでしょうね?
長谷川 そこが、解かなければならないなのではないかと……今、三時です、すごく短く感じなかった?
柳 二、三十分ぐらいしか経っていないのかと思った。
長谷川 一時間が、ね。このあと、一時間休憩して、お父さんが登場する。
柳 私はアレですかね? 事前に父にわないほうがいいですかね?
長谷川 どちらがいい?
柳 それをずっと考えているんです(笑)。
長谷川 この部屋で勝負すればいいんじゃないですか?
柳 じゃあそうします。なんかね、ロビーに迎えに行って、ラウンジでお茶するなんてことになったら、近況を訊かざるを得なくなってしまうじゃないですか。つい数日前に母から聞いて仰天したんですが、本国から出稼ぎに来た、私とあまり歳が変わらない韓国人女性と同棲してるらしいんですよ、家族が暮らしていたあの家で。それを訊くのもアレだし、訊かないのもナンだし……。
長谷川 話の取っ掛かりは、だれがつくります?
私?
柳 です、かね……。
長谷川 じゃあ、そのへんはお任せでいい? 話すときの位置は、どうしましょうか?
柳 あぁ、位置……座る場所ですね……。
長谷川 お父さん、柳さんのとなりだと、ちょっと近過ぎるでしょう?
柳 ちょっと近いですね(笑)。
長谷川 お父さん、正面のほうがいい?
柳 正面でもいいですよ、はい。
長谷川 こんな感じで、私がここで、柳さんとお父さんのあいだを椅子一つ分ぐらい離して……あいだに塀がなくてもだいじょうぶ?
柳 だいじょうぶですよ(笑)。
長谷川 パンチとか飛ばない?
柳 だいじょうぶですから(笑)。
長谷川 今、心は穏やか?
柳 そう、ですね。
長谷川 決戦の前、という感じではない?
柳 緊張はしていますが、昂ぶってはいません。
長谷川 お父さんを交えての二時間、なにが起きるか。私は、ワクワクしていますよ。
柳 ワクワク、ですか?
長谷川 最後のチャンスかもしれないからね。
柳 それは、そうですね。心理的な距離がかなりあるので、うとなると、それなりの理由が要りますからね。最後かもしれない……。
長谷川 じゃあ、柳さんには四時五分前にこの部屋にはいってもらって、四時ちょうどに石井さんにお父さんを連れてきてもらう。
柳 よろしくお願いいたします。
長谷川 柳さん、部屋はあるんですか?
柳 今日は、泊まりなので。
長谷川 じゃあ、待っているあいだ、なるべくなにも考えないで、旅の車窓から流れる風景を眺めるような感じで、ぼうっとしていてください。 つづく
by tamachanspaws
| 2010-03-24 22:53
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